我々真核生物のゲノムにはウイルスに由来する遺伝子配列が存在します。このようなウイルス由来の遺伝子配列を内在性ウイルス様エレメント (Endogenous Viral Element: EVE) と呼びます。EVEは真核生物の進化の過程においてウイルスの遺伝子配列を真核生物のゲノムに取り込むことによって生じたと考えられています。
これまでにEVEの研究を通じて、ウイルス学、古ウイルス学、さらには生物進化学など、多岐の分野にわたって非常に興味深い科学的知見が得られています。例えば、ウイルスは恐竜などのように体化石を残さないため、過去の存在を知ることが非常に困難です。しかし、EVEは生物ゲノムに存在する「ウイルスの分子化石」であるため、EVEから太古のウイルスの存在やそのゲノム構造など関する知見を得ることができます。また、EVE由来の遺伝子の中には胎盤形成や抗ウイルス機能など、宿主の体内において重要な役割を果たすものが存在することが報告されており、真核生物とウイルスの共進化に関する新たな概念が次々と発表されています。
現在EVEの研究は世界中で盛んに行われています。日本においても様々な研究室においてEVEをテーマとした研究が行われていますが、EVEに特化した学会や研究会が存在しないのが現状です。またEVEの研究にはウェットな実験からドライな解析まで様々な実験方法を組み合わせる必要があります。これまでにも一部の研究グループ間では共同研究が行われてきたものの、その共同研究の輪は決して大きなものではありません。
我々はこのような現状を顧み、様々な意見交換や共同研究をより活性化するため内在性ウイルス様エレメント研究会 ENDEAVR (ENDogenous Elements from Ancient Viruses Research club) を立ち上げました。研究会の名前には「若手」とありますが、これは年齢の壁を意識せずに議論することを目的としているため、年齢制限は一切ありません。
皆様と切磋琢磨し、EVE研究を盛り上げていくことができれば幸いです。
堀江真行
2016年4月1日